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WITH HOPE!!

イギリスで18年間暮らし、2016年7月に日本へ帰国した、ピアノはロシア系、中身はイギリス、国籍は日本人のピアニスト。 

先生方のコンサート(8月14日) 

先週とはうってかわって、だいぶ秋の気候が入ってきているロンドンです。
日中はよくても、さすがに夕方以降になると、素足にサンダルだと肌寒くなってきました。 

 もう1週間以上前のことですが、サマーコース中、8月14日に行われた、先生方によるコンサートの記録を書いておきたいと思います。

 サマーコースには期間中全日程教える先生と、2、3日のみの先生の2種類います。 コンサートに出演したのは、ほぼ全日程教えた先生で、なおかつ、今回は全てがロシア系の先生方、という状態でした。

 1、 イリーナ・ベルコヴィチ先生(Irina Berkovich) イスラエルのルービン・音楽アカデミー
    ベートーヴェン: ピアノソナタ 第31番 作品110
 
 2、 ファズリディン・フサノブ先生(Fazliddin Husanov) クウェート音楽大学
    ベートーヴェン: ピアノソナタ 第32番 作品111

 3、 イリーナ・オシポヴァ先生(Irina Osipova) モスクワ音楽院
     15世紀の作曲家の曲2曲 
     ラモー: 2曲
     ラヴェル: 『鏡』より 悲しき鳥たち、 洋上の小船

 4、 アルベルト・タラカノフ先生(Albert tarakanov) ネイガウスの弟子
     ドビュッシー:『前奏曲』より、 沈める寺、 ミンストレルズ、 雪の上の足跡、 花火
     プロコフィエフ: トッカータ

 5、 マイケル・シュレイダー、 オルガ・マリソヴァ(Michael Schreider, Olga Malisova)
ラヴェル: ラ・ヴァルス(1台4手版)

 
 珍しく、後半(オシポヴァ先生以降)はフランス物が並ぶプログラムでした。
 たいていはトリのことが多いオシポヴァ先生が中間で弾いたら、ラヴェルの途中で上から2つ目のラの音の弦を切ってしまい、高音部を弾いた、オルガの音が抜けに抜け、気の毒になってしまいました。

 
 この日、お昼までは4時間のレッスンをして、そして受講者の前での演奏。
 毎回、先生方は大変なのですが、それでも、生徒たちは楽しみにしているのです。
 自分を教えている先生方がどのような演奏をするのか、また、今回初めて習う先生はどのような演奏をする方なのか。 それによって、レッスンに持って行く曲を私は考えますので。

 一番最初のイリーナ先生。 彼女が私が陶酔した先生です。
 前日のレッスンで、バランス、プロポーションについてとことん注意を受けました。
 彼女の演奏からは、それが何を言いたかったのか、クリアにわかります。
 決して派手ではなくて、堅実な演奏。 ですが、細かい響きと見事なコントロール。
 一般的に受け入れやすい演奏ではないかもしれません。 でも、私は思わず涙がでそうになるような演奏。
 冷静さの中に、ものすごい暖かさのある演奏だったのです。
 一番最初、ということもあり、その後の先生のレッスンで先生が弾いた時よりも、音自体が乏しかったのが残念でしたが。
 
 プログラムがわからないまま、その度に司会が入る進行だったので、次のファズもベートーヴェン、と聞いた時には、みな、少々動揺。
 ファズは、私がカーディフの音大に入った時にディプロマコースで、同じ師匠について学んだ仲。
 優秀なので、その後、カーディフでずっと教えていたのですが、昨年からクウェートで教えているそう。
 当時から私の大きな目標であり、大好きなピアニストでした。
 ですが、今年は違いました。
 ベートーヴェンの最後のソナタ、第32番。 私も9年前に勉強し、学部の卒業リサイタル試験の1曲でした。
 それを、ファズの演奏で聴ける。 
 彼の演奏は、繊細で、音色が豊かで、表現力豊か。 でも、派手すぎず、気品がある。
 数年前までは、どちらかというと内にこもっていたのが、子供が生まれてから、ずいぶん演奏が変わりました。
 多分私が最後に彼の演奏を聴いたのは、2008年。
 このソナタの第2楽章、物凄く繊細に弾くのだろうな、と思っていたのですが、輝かしすぎ。
 もちろん、第1楽章でのテクニック的な確かさ、音量、素晴らしいのです。 そして、第2楽章でのトリルの美しさ。
 でも、私が求めていたもの、いや、数年前の大好きだった演奏とは違う。
 複雑な気持ちでした。

 
 小休憩を挟んで、大御所、イリーナ。
 彼女の演奏は、今までに何度も聴いているし、彼女のメトネルと、ラフマニノフのCDは私の愛聴版。
 元々ハープシコードの為に書かれた小曲4曲を、その時代の様式をはっきりと頭に入れた上で、現代のピアノのよさを生かして演奏。
 続いて、ラヴェルは、数年前にも聴いているような気がします。
 彼女はマリーニンに師事したピアニスト。 マリーニンといえば、私の憧れ。
 色々な意味で、彼女の演奏はキラキラしていて、迫力があり、一音一音が輝きに満ちている。
 たまに、やりすぎになるのは師匠と話していると話題に上ること。
 もちろん、大音量の演奏も迫力あってすごいけれど、彼女のショパンのノクターンとかは絶品。
 私も、今まで、チャイコフスキーのロマンスとか、ショパンのノクターンとか、どれだけ忘れられないレッスンがあったか、わかりません。
 もちろん、今回も、ラヴェルでの、細かい音のきらびやかさは見事。
 情景が鮮明に浮かび、思わず息を呑むほど。


 続いて、今回初参加なのか、その前からいらしていたのかわかりませんが、私にとって初のタラカノフ先生。
 英語が全く話せないこともあり、最初は物静かなイメージの先生でした。
 私はこの時点では彼のレッスンを受けていなくて、全く何も知らない状態で演奏を聴きました。
 懐かしい、ロシア人のドビュッシー。
 沈める寺も、ミンストレルズも大学生の時に師匠と勉強したもの。
 あの時、イギリス人の先生方から、ドビュッシーではない、と講評された曲。
 確かに、フランス人が弾くドビュッシーとは全然違う。
 でも、別にいいじゃない、というのが私の考え。
 音色、表現、とにかく豊かなのです。
 ちょっと気難しそうに見えたこの先生、演奏はお茶目で、表現豊かで、変化に富んでいたのです。
 
 そして、プロコフィエフのトッカータでの切れ。
 切れがあるけれど、指が見事に鍵盤に吸い付いている。
 といっても、私は音重視なので、腕の動きは見えるけれど、鍵盤、指は見えない場所で聴いていました。
 それでも、吸い付きがわかります。
 テクニック系の曲なのに、もちろんテクニックはあるけれど、それ以上のものをみせる。
 

 そして、最後は師匠ご夫妻。
 先生、白シャツに黒の蝶ネクタイという姿で登場。
 5月の先生方の生徒の発表会でも、この曲の演奏は聴いています。
 その時よりもずっと豊かになって、遊び心がある演奏でした。
 何よりも驚いたのは、今まできらびやかだけれど、あまり深みの無かった奥様の音が、とてもやさしい音色になっていたこと。 それにより、曲に深みが加わったらしい。
 やっぱり私は師匠の弟子なのだ、と認識するほど、心地よい音楽。
 自由さがあるけれど、念蜜なストラクチャー。
 
 
 演奏し続ける先生に習いたい、という考えの私。 それを、みせてくれた先生方の演奏でした。
 先生方の演奏を聴いていると、レッスンで注意することと、先生方が一番気をつけているのだな、と思うところは一緒。
 彼らが、お互いに指導したら、どういう風になるのかしら?なんて考えてもしまったり。
 一流ホールで演奏したり、誰もが知っているピアニストたちではありません。
 でも、心に語りかけてくるピアニストたちがいる。
 そして、そのピアニストに指導を受ける。
 恵まれているんだ、本当はもっとがんばらないといけない、と思わせてくれた一晩でした。

Posted on 2012/08/22 Wed. 22:47 [edit]

category: サマーコース 2012年

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